【インタビュー①】 阪大教授・河原吉伸先生に「AIって何ですか?」って聞いてみた
こんにちは。事務課の北原です。
大阪電子専門学校(OEC)では、人とロボットが共存する「人×AI×ロボット」時代を見据えた学びを目指しています。…が、そもそもAIって何でしょうか。何となくイメージは浮かぶけれど、「AIって何?」と聞かれたら、さっと答えられる人は少ないと思います。
それならば、専門家に聞いてみましょう!
というわけで、機械学習・AIの最先端を研究する河原吉伸教授に、AIについて素朴な疑問をぶつけて答えてもらいましたので、何回かに分けて記事をお届けします。
※OECでは2024年度から機械学習・AIの最先端を研究する大阪大学大学院情報科学研究科の河原吉伸教授に顧問になっていただき、学習・運営をサポートしてもらっています。
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――河原先生、AIって何でしょうか?
いろいろな説明の仕方があると思いますが、簡単に言うと「汎化(はんか)」を実現する情報技術です。
――ハンカ…ですか。全然簡単ではありません…!
すみません(笑)
汎化というのは、さまざまな異なる対象に共通する性質を見つけて法則などを見出すことです。僕たちは、白いネコを見ても黒いネコを見ても、それがどちらも猫だってすぐわかりますよね。ネコが横を向いていても、寝転がっていても、やっぱりネコはネコです。
こんなふうに、どんな色や形をしていてもそれがネコだとわかるのは、僕たちがネコに共通する性質を見つけて法則化し、それを無意識のうちにあてはめているからです。でも、もし、ネコという概念をまったく知らない人にネコとは何かを一から説明しようとすると、かなり難しいですよね。
――確かに。ニャアと鳴く動物で…膝に載るくらいの大きさで…模様はいろいろあって…って説明していたらキリがないですね。
機械に説明するのはもっと大変です。機械は、僕たちが持っている「常識」をもっていないので、「動物とは何か」もわかりません。一から教えようとしたら、常識も含めて、ありとあらゆるネコのパターンを説明しなくてはなりません。それって大変というか、ほぼ不可能ですよね。
――その不可能を実現するのがAIってことですね。AIすごい!
そうなんです。正確に言うと、AIに使われている機械学習がそれを行っています。機械学習というのは、機械(コンピュータ)が自分で勝手に学習する方法です。AIは、機械学習によって、与えられたデータを学から共通点や法則性を見つけます。そうすれば、未知のデータを与えられた時でも、それを判断できるようになります。
――ネコのデータをいっぱい与えたら、初めて見るネコでも、ちゃんとネコだとわかるようになるわけですね。
はい。さっきからネコの話しかしていないような気がしますが(笑)、写真の顔を認識して人物を区別できるのも、chatGPTが次に来る言葉を予測してなめらかな会話を成り立たせるのも、障害物や人を認識して車の自動運転を実現するのも、すべて汎化の実現によるものです。
――汎化によっていろんなことができるようになるんですね。
そのとおりです。汎化を実現するスピードも性能も、どんどん上がってきています。昔はできなかったことが、今はどんどんできるようになっていますよね。
――それは、コンピュータの性能が上がったからですか?
もちろんコンピュータの性能は関係していますが、それだけではありません。一番大きいのは、機械学習の仕方が進化してきたことです。研究者たちによって、より効率的に学習できる方法が、どんどん編み出されてきているのです。
そのような機械の学習方法のことを「学習モデル」と呼びますが、chatGPTが実現したのも「Transformer」という新しい学習モデルが登場したからなんですよ。
僕たちは、この機械学習のより良いモデルを開発するための研究をしています。
――なるほど。河原先生の研究が、少しわかってきました!次回の記事で、ぜひ詳しく…いや、わかりやすく教えてください。
はい、わかってもらえるように、説明をがんばります(笑)
(つづく)