【インタビュー②】ドラえもんはなぜまだ実現できないのかーー 阪大教授・河原吉伸先生インタビュー
こんにちは。大阪電子専門学校(OEC)事務課の北原です。
今回も、前回のインタビューに引き続き、AIの最先端を研究している河原教授に、素人丸出しの質問をぶつけてみたいと思います。
前回の記事をまだ読んでない方は、ぜひこちらもご覧ください。
【インタビュー①】 阪大教授・河原吉伸先生に「AIって何ですか?」って聞いてみた
※OECは2024年度から機械学習・AIの最先端を研究する大阪大学大学院情報科学研究科の河原吉伸教授に顧問になっていただき、学習・運営をサポートしてもらっています。
――前回のインタビューで、AIは「汎化」を実現する情報技術だと教えてもらいました。汎化についてはわかったのですが、それが実現できることのすごさがあまりわかりません…
そうですね(笑)ネコがどんな格好をしていてもネコだと見分けられる能力を汎化の一例として挙げましたが、そんなことは人間なら、子どもでもできてしまいます。ですから、あまりすごい感じはしないかもしませんよね。
AIのすごさをもう少し分かりやすい例で紹介できたらいいのですが。
――分かりやすい例…たとえば、AI技術が発展すると「ドラえもん」が実現するんでしょうか。
するでしょうね。
――するんですか!すごいですね。
今の技術でも部分的に見れば、実現できている機能はありますよ。たとえば「視覚」。物を見てそれが何かを判断することは、今の技術でもかなり正確にできるようになりました。
――顔認証機能などは、身近なところでも実用化されていますね。
はい、セキュリティ面でも活用されてますね。
また、カメラの画像で特定のものを認識する機能は、工場などでベルトコンベアを流れていく部品の中から不良品を見つけるときなどにも使われています。視覚に関しては、もうすでに人間以上の性能を達成できている分野もあります。
――ドラえもんの動きはどうでしょうか。今のロボット技術で実現できそうですか?
周囲の状況に応じてロボットに適切な動きをさせることも、ある程度できると思います。また会話もChatGPTのような技術を応用すればできるようになるでしょう。
――では、ドラえもんの実現も間近ですね!
ところが、そう簡単にはいかないのです。
ひとつひとつの機能は実現できても、それらを関連づけて、総合的に連動させて動かすのは、技術的にまだまだ難しいところがあります。
もし、無理矢理がんばって実現できたとしても、ドラえもんが少し動くだけでとてつもない計算をしなくてはなりません。高速で大量の計算をするためには、特別なコンピュータが必要です。電力も大量に使うので、今の段階では現実的ではありません。
今のAI技術を進展させるためには、コンピュータなどのハード面が改良されていく必要があります。それに加えて、AIを動かすソフトの方も、さらに進化させる必要があります。前回もお話ししましたが、もっと効率的に計算ができる学習モデルが開発されれば、ドラえもんの実現も近づいていくかもしれません。
――AIの今後の発展が楽しみです。これからAIに関わる仕事をしてみたい人にメッセージをお願いします。
私が研究を始めた頃と比べると、AI研究は目覚ましい進歩を遂げています。まだまだ研究しなくてはいけないことはたくさんありますが、これからは研究の成果が社会でどんどん活用されていく時代になっていくと思います。と言いますのも、AIでできることが今よりもっと増えてくるからです。
AIがさまざまな分野で使われるようになり、会社や家庭のような身近なところで活躍する未来が訪れるでしょう。そうなると必要になってくるのは、AIのことが分かる技術者です。
私たちのような研究者だけでなく、AIが使われている現場で、AIをサポートするエンジニアの役目がますます重要になってきます。大阪電子専門学校でAIを学んだ人たちが、未来のAI社会を創ってくれるのを期待しています。
(おわり)